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ラジオが輝き出した瞬間

takama

正直に言えば、昔はラジオに特別な感情を抱いたことはありませんでした。テレビやインターネットが主流の中、ラジオは「時代遅れ」とさえ思っていたんです。

でも、仕事でラジオに関わるようになり、その魅力に気づかされました。それは、人の「声」が持つ温かさや語りの力。何より、目からの情報がない分、耳から入る音声がこんなにも心に響くものなのだと実感しました。

記事を書いた人

くぼ としこ

コミュニティ放送局 YES-fm(ミナミのラジオ)

放送局長代理


声だけが持つ力

ラジオの特徴は、何といってもその「声」だけの世界です。映像がない分、その人の表情や動作、周囲の背景といった情報が遮断されます。

そのため、声にこもる感情やニュアンスが鮮明に伝わってくるんです。たとえば、語尾の震えや話すスピードの変化だけでも、話し手の心情がありありと浮かび上がります。

科学的にも、声だけのコミュニケーションは感情を読み取る力を高めると言われています​。顔の表情やジェスチャーがない分、私たちは無意識に耳を澄まし、声に集中するからだそうです。たしかに、耳だけで情報を得るという行為は、感覚が研ぎ澄まされるような感覚がありますね。


ドレスアップのない語り

ラジオのもう一つの魅力は、見た目の装飾がない「素」の語りです。テレビでは、話す人のメイクや服装、さらには背景の豪華なセットが視聴者の注意を引きますよね。でも、ラジオにはそれがありません。声だけでリスナーに届けるのは、その人の「人柄」や「パーソナリティ」。装飾がない分、ごまかしが効かない。だからこそ、一言一言が心に直接響いてくるのだと思います。

実際にラジオ番組を聴いていると、語り手の個性や本音が感じられて、まるで友達と話しているような親近感が生まれます。これはテレビではなかなか味わえない特別な体験です。


私が感じたラジオの「怖さ」

しかし、ラジオの世界にはある種の「怖さ」もあります。というのも、視覚的な情報がないことで、話し手の本音が丸裸になるんです。どんなにプロフェッショナルなパーソナリティでも、声のトーンや間の取り方一つで感情が漏れてしまう。

聴く側もそれを敏感に感じ取るので、リスナーと語り手の距離感がとても近くなるんです。この密接さが時には圧倒的で、逃げ場のない感覚になることもあります。

ただ、それがラジオの魅力であり、唯一無二の価値なのだと気づきました。ラジオは、聴く側と話す側が共に想いを分け合い、そこに新たなつながりを生み出すメディアなのかもしれません。


作り手として見つけたラジオの魅力

こうしてラジオの制作に携わる中で気づいたのは、取材や会話を通じて、共感や新たな気づきが生まれる瞬間の尊さです。人の声を通して、相手の考えや感情に触れるたびに、「この人の言葉をもっと多くの人に届けたい」と心から思うことがあります。その積み重ねが、ラジオという音声コンテンツの魅力を形作っているのだと感じています。

リスナーに届くのは単なる情報だけではありません。その背景にあるストーリーや語り手の熱意、時には取材者としての私たちの視点も含まれます。それが聞き手に響き、何かを感じ取ってもらえる――この瞬間が、作り手として最高にやりがいを感じる瞬間です。

音声だけで伝えるラジオだからこそ、一言一言が生きた感情を宿し、聴く人の想像力をかき立てる。その魅力をもっと追求していきたい。そう思いながら、これからも共感を生むコンテンツを届けたいと心から願っています。

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